「must」と「have to」は同じ?
学校では、「must」と「have to」は同じであると習います。
よく試験で出ていたのを覚えている方もいらっしゃるでしょう。
でも、本当に同じでしょうか。
全く同じであるならば、どちらかは不要なのではないでしょうか。
実は、「must」と「have to」にはいくつか違いがあります。
例文を交えて説明いたします。
はじめに音声について説明させてください。
これからご紹介する例文のうち、左側に以下のマークがついているものがあります。
PCの場合はマウスのカーソルを、スマートフォンやタブレットの場合は指を、このマークがある英文に合わせてクリックまたはタップするとマークの色が以下のように変わり、音声が再生されます。
何度も繰り返し聞いて、表現を耳から覚えて自分のものにしましょう!
「〜しなければならない」の「must」と「have to」の違い
「must」は「主観的な感情、願望」
You must see that movie.君はあの映画を見なくちゃ。
この「must see」を「見なければならない」と訳すと強制感があります。
命令しているような感じです。
しかしながらこの話し手は、そのようなつもりで言っているわけではないでしょう。
話し手は、自分の主観として、「見なければならない映画」≒「おすすめの映画」、「相手に見てほしい映画」として相手にその映画を見ることを勧めていると言えます。
そのジャケット買わないと。似合っているよ。
こちらも映画の例文と同様で、ジャケットの購入が義務付けられているわけではなく、あなたにぴったりだ、似合っている、だからあなたに買ってほしいという、話し手の感情や願望に基づくものと言えます。
日本語でも一押し商品のことを「マスト・バイ」や「マストアイテム」ということがありますが、やはりこれも「must」の持つ主観的な感情、願望に基づくものです。
実際、「マスト・バイ」や「マストアイテム」を買わなくても、非難されたり、困ったりすることはありません。
「have to」は「外部要因、客観的な理由による必要性」
天気が良くなるまであなたはここに留まらなければならない。
この例文の場合、「今は天気が悪いから外に出るのは危険」ということが読み取れます。
つまり、「悪天候」という外部要因、客観的な理由による必要性により、そこに留まることと勧めているわけです。
最初に公式な許可を得なければならない。
何かの手続きを進める上で、組織の上層部や役所などからの正式な許可がないとその先に進めないというニュアンスがあります。
これもルールや法規制という外部要因、客観的な理由による必要性のため、公式な許可を得ることを勧めていることになります。
ここまでのまとめ
ここまでのまとめです。
「must」は「主観的な感情、願望」
「have to」は「外部要因、客観的な理由による必要性」
「〜しなければならない」の「must」と「have to」の否定形における違い
「〜しなければならない」の「must」と「have to」は否定形にも違いがあります。
「must not」は「禁止」を表す
「must」の否定形「must not」は、「〜してはいけない」という「禁止」を表します。
子どもたちは見知らぬ人に話しかけてはいけない。
「do not have to」は「不必要」を表す
一方、「have to」の否定形である「do not have to」は「〜する必要がない」という「不必要」を表します。
この電車は直通だから乗り換えの必要がない。
「must not」を「不必要」の意味で用いることはできませんし、「do not have to」を「禁止」の意味で用いることもできませんので注意しましょう。
ここまでのまとめ
ここまでのまとめです。
「must not」は「禁止」を表す
「do not have to」は「不必要」を表す
「確実であることを結論づける」ときの「must」と「have to」の否定形における違い
「must」と「have to」は両方とも「〜のはずである」と何かが確実であることを結論づけるときに使うことができます。
彼は冗談を言っているに違いない。そうでなければ狂っているかだ。
She’s 45? No, you have to be kidding!彼女が45歳だって?いや、からかっているんでしょ。(からかっているにはずだ) (「kid」には動詞で「からかう」という意味があります。)
「must」の否定形は「can not」。「〜のはずがない」
「〜のはずである」の「must」の否定形として「must not」を使うことはできません。
代わりに「can not」を使います。
「can not」で「〜のはずがない」という意味になります。
これが本当のはずがない!
「have to」の否定形は「do not have to」。「必ずしも〜とは限らない」
「確実であることを結論づける」ときの「have to」の否定形は「do not have to」です。
しかしながら、「do not have to」は「〜のはずがない」という意味ではありません。
「do not have to」は「必ずしも〜とは限らない」という意味になります。
犯人が彼だとは限らない。
ここまでのまとめ
ここまでのまとめです。
「must」の否定形は「can not」。「〜のはずがない」
「have to」の否定形は「do not have to」。「必ずしも〜とは限らない」
「must」と「have to」の過去の表現における違い
「must」と「have to」には過去の表現にも違いがあります。
「must」の過去の表現は「must have+過去分詞」。「~だったにちがいない」
「must」は助動詞ですので、それ自体を変化させて過去を表現することはできません。
そのため、「must have+過去分詞」の形で表現します。
なお、意味は「~だったにちがいない」となります。
「〜しなければならなかった」という意味で用いることはできません。
あなたは私の意図を誤解していたにちがいない。
「have to」の過去の表現は「had to」。「〜しなければならなかった」
「have to」の過去の表現は「had to」です。
「〜しなければならなかった」という意味になります。
「~だったにちがいない」という意味で用いることはできません。
彼は体調不良のため、退職しなければならなかった。
ここまでのまとめ
ここまでのまとめです。
「must」の過去の表現は「must have+過去分詞」。「~だったにちがいない」
「have to」の過去の表現は「had to」。「〜しなければならなかった」
カテゴリー
まとめ
最後におさらいをさせてください。
「must」は「主観的な感情、願望」
「have to」は「外部要因、客観的な理由による必要性」
「must not」は「禁止」を表す
「do not have to」は「不必要」を表す
「must」の否定形は「can not」。「〜のはずがない」
「have to」の否定形は「do not have to」。「必ずしも〜とは限らない」
「must」の過去の表現は「must have+過去分詞」。「~だったにちがいない」
「have to」の過去の表現は「had to」。「〜しなければならなかった」
「must」と「have to」の4つの違いについて理解が深まりましたでしょうか。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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